経営管理技術の特徴

共同作業による部会の結束

 部会発足当初の活動は、体重測定や導入・出荷作業、自給粗飼料生産が主で、堆肥はもっぱら飼料畑に投入していました。稲わらは、この頃利用用途も多く高価なものでコンバインで刈り落とされた長わらを有償で収集していました。

 昭和53〜54年にかけて規模拡大と堆肥処理施設の整備を実施し、本格的に堆肥化処理に取り組み、水稲を中心とした耕種農家への利用促進を図ってきました。昭和57年に共同利用の稲わら収集機械を導入したことを機に本格的に稲わら収集と堆肥の散布を始め、現在は部会で年間66.5haを収集し、部会全体の年間給与量の約半分を賄っています。

 共同作業とは言え限られた期間にこれだけの面積の稲わらを確保・収集するには耕種との連携、部会員の連帯がなければできないことです。口蹄疫の影響によって稲わら収集の必要性があらためて叫ばれていますが、作業期間が限られた時期に集中するため労働力の確保、作業機械の装備が必要であり天候にも左右されることから家族経営では対応が難しいのが現状です。

 このように、時代に則した生産管理体制を整えるため、部会を基盤として補助事業を受け規模拡大、粗飼料生産機械の導入、堆肥処理施設を整備して近代化を図ってきました。今後も部会にとって組織的な共同作業による効果的な施設・機械の利用が個々の経営のカギとなっています。

どんぶり勘定からパソコン管理へ

 昭和50年から実施してきた畜産会の経営診断により、経営収支・技術成績の把握等部会員の経営管理意識は向上し、「どんぶり勘定」から脱却することになりました。平成6年には奥さんたちが主体となって普及センターの指導によりパソコン簿記への取り組みが始まりました。

 平成9年には個々にパソコンを購入し、全農の経営管理システムによる経営管理を行っています。指導は経済連が行っており、平成11年から牛個体毎のデータも入力し、個体管理にも役立てています。

舎内消費者ニーズにあった牛肉生産で安定経営

 昭和62年から、安全で安心な乳用種の牛肉を安定的に供給することを条件として地元生協との契約生産が始まりました。生協組合員とは牛舎の視察や交流会で親交を深め、抗生物質を使わず、地場で収集した稲わらを使用するなど、安全で安心な牛肉生産に対する理解を得るように努めてきました。

 しかし、最近の消費者のニーズは黒毛和種の牛肉を好むように変化してきましたので、乳用種の導入を減らし、黒毛和種を多く導入することでニーズに応えています。

 黒毛和種肥育牛は、高級牛肉生産で知られる三重県の中にあって、同じ黒毛和種であってもあえて大衆向きの牛肉生産に狙いを定めた経営を行っています。肥育期間を短くし、回転率をあげることで安定した経営を目指しています。

 また、安定した品質の牛肉を生産するため、年に1〜2回共同で各地の市場へ導入に行きます。各経営が同じ市場から導入した牛の肥育成績と肉質を比較検討して導入先の選定にも役立てています。飼料設計等技術的な指導と流通に関する指導は経済連から受けています。

 消費者ニーズに合った商品作りの姿勢と均一化した品質の安定供給を望む大手スーパーとを経済連が結び付け、平成9年から「北伊勢和牛」というブランドで販売しています。さらに技術面での研究を重ね、高品質の牛肉生産により流通関係者の信頼を高め、取り扱い店も拡大していきたいと考えています。

新しい技術や作業効率化に向けた取り組み

 転換田100aを利用して、稲のホールクロップラップサイレージ生産に取り組みました。収穫作業は、県農業技術センターが開発した新型カッティングロールベーラの実証展示として行われました。台風直後のぬかるんだ田んぼと倒伏した稲にも関わらず上手く収穫することができました。飼料としての食い込みも良く、これからも転作田を有効に利用する技術として取り組んでいきたいと考えています。

 昨年から肥育成績の向上を目的に除角を試験的に行いました。現在は導入直後の牛に共同作業で全頭実施しています。また、経済連の指導で肉質の調査を目的として部会員それぞれが試験牛を飼養し、指定飼料を給与して定期的に体測と血中ビタミンの測定を行っています。測定データを定期的に検討し、出荷時の枝肉成績を確認した上で品質向上のために導入先の選定や飼料設計に活かされています。

 また、個々の経営では、それぞれが序々に規模拡大に取り組んできました。家族経営での飼養管理は、現状で限界にきているので自動給餌器を導入した経営もあります。部会の方針としては、必要な投資は惜しまず飼養管理の効率化により更なる規模拡大を進めています。