経営の概要

 山下さんは、消費者の皆さんに新鮮で美味しい鶏卵を提供することで、農業の楽しさを伝えると共に、自分の経営を他の農業者らと共に考え、地域とのつながりや地域への貢献というポリシーの実践のために次に掲げるような様々な事柄に取り組んでいます。

山下盛通(山下鶏園)三重県松阪市丹生寺町

安心安全の鶏卵生産

山下さん 県養鶏協会のHACCPグループに参加し、サルモネラ検査や抗体検査、専門業者によるネズミ駆除、水質検査、生産現場の検便の実施等の衛生対策やグループ員同士による意見交換や情報収集にも努めています。

 山下さんの経営では抗生物質は使用しておらず、鶏に給与する水は弱アルカリイオン水を与えています。 健康な鶏が美味しい卵を生産するという理念から、鶏舎内の環境づくりには特に留意しています。成鶏ケージも通常なら3段ケージでも充分対応できる余裕(空間)を持っていますが、設計当初から敢えて2段にすることにより、通風性を良くしています。整理整頓、清掃等は言うに及ばず励行されており、舎内にはクモの巣などは見当たりません。

鶏糞処理等の環境保全対策

 飼養羽数に応じた適切な施設を有し、堆肥化と製品の販売や譲渡についても地域耕種農家との連携を念頭に置くなど、山下さんの取り組みには大いに学ぶところがあります。

全景計画的に実施されてきた鶏舎・施設等の整備

 規模拡大とともに無理なく実施されてきた鶏舎・施設等の整備は、平成12年に完成した直販所の整備で、ひとつの区切りを迎えました。夏期には冷房対応もできる24時間オープンの自販機を設置することにより、より新鮮な鶏卵を安心して提供できるようになりました。

 また、鶏舎からの集卵を自動化することによって、衛生面でも安心でき、労働面では、必要最低限の労力で効率よく鶏卵処理ができるようになりました。ここから生じた時間は対面販売等、皆さんとのコミュニケーションに活かしています。

消費者等とのコミュニケーション

 管内普及センターによる経営指導で平成8年から簿記を、平成9年からパソコン簿記を学び経営に活かしていますが、別の面でもパソコンが大いに活用しています。

 鶏卵販売においては、ポップやパンフレット、お客様へのメッセージ等の作成にフル活用しています。なにより効果が上がっているのは、顧客管理であり、ダイレクトメールを発信することにより鶏卵と堆肥の販売に直結しているといっても過言ではありません。

 山下さんの経営では、卵にユニークなニックネームを付け、楽しい鶏卵販売にも心がけています。単なるS・M・Lといった無味乾燥な区分ではなく、こんなところでもお客さんとの対面販売で楽しいコミュニケーションが始まり広がっています。

 お客様からは「いきいき、くださーい。」「どすこい、くださーい。」と声がかかます。

 消費者との意思疎通の一環として、年2回、景品付のアンケート実施も行っています。アンケートを実施することにより、お客様の生の声を聞くことができ何らかの形でこれらに対応し、経営の参考とするとともにお客様とのお付き合いをさらに信頼あるものにしています。

情報の発信

 県が推進する地産地消事業の一環であるイーコードエス、管内普及センター内の農業者グループ、畜産会が作成する「こだわり市場」等を活用し、インターネットによる情報発信にも大変熱心な山下さんです。

 また、地域内外の小中学校へ訪問して農業の大切さ楽しさを講演したり、生徒たちの視察・農業体験を受け入れたりといった現場での取り組みにも積極的であり協力的であります。平成11年にメールでの対応から始まった小学校とのやり取りの中から、また新たなお付き合いが始められることとなっています。

 交流という面から見ると、上記の活動以外では、山下さん自身や弟さんの農協青年部活動(JAMY)や奥様の普及センター仲間との活動(フルフルM・I・T)といった幅広い交流が見られます。

 奥様が参画する普及センターの女性グループでは、他の専業農業者との交流を通じて情報交換や意見交換から始まり、各自のお客様に対して他の農産物を紹介しあうといった広がりも生まれてきています。山下さんは、「女性からの視点は経営主に新たな問題提起や経営へのヒントも含まれており、経営に役立ている。」とも考えています。

 昨年、奥様の仲間有志で計画・実施したベトナムへの海外農業研修では、奥様が主となり視察内容を冊子に取りまとめたところ、県関係機関から高い評価も受けました。