新規に就農された経緯をお聞かせください。
学生の時に自然科学の分野を勉強していたことから、将来はその方面の研究に就けたらいいなと思っていたのですが、だんだんと自分の手で農業をやってみたいという気持ちが高まり、卒業後もそういった土地を探していました。
たまたま知り合いのまた知り合いの・・・といった方が、ここ美杉村へ移り住んで農業を始めたということを聞きつけて、私もここに住むことになりました。
両親は私が理想とするような農業など現代では成り立たないと言い、猛反対しましたが、何とか理解を得ることができ、美杉村での生活が始まりました。私が23歳の時でした。
現在住んでいる家は、小学校分校の旧校舎を現在の場所へ移転して、使わせていただいています。住み始めた当初は「こんな過疎地へ来るヤツはいったい何者なんだ?」と珍しがられもしました。
農業をするには、まず土地が必要なわけですが、よそ者に最初から条件の良い土地を貸してやろうなどという人はなかなか見当たりませんでした。やっと貸してもらった荒れ果てた土地を「開墾した」というような状態でした。
今では皆さんからの理解も得られて、反対に「うちの土地も使ってくれ」と言われるようになってきました。
どういった農業をやってみえるのですか?
きょう、畜産会から来てもらっているわけなんですが、うちが畜産農家といえるかどうか?
ここへ来てまず手がけたのは、野菜作りです。野菜作りだけでは生活できませんでしたから、製材所でアルバイトなどもしました。今は野菜の他に米や少ないですがお茶も作っています。
牛は、飼いはじめて9年ほど経ちます。1頭から始めてコツコツと増やし、現在では繁殖牛が8頭になりました。子牛や肥育牛(一産取り)も含めて25頭です。牛舎は言うに及ばず「手作り」です。1頭の時には1頭用の牛舎を建てただけですから、増頭のたびに継ぎ足し継ぎ足しした結果、だんだんと軒先が低くなってしまいました。
牛から得られる堆肥は、私にとって大切な肥料です。野菜などは無農薬あるいは低農薬、有機の産物として愛知県の自然食品を取り扱うお店に買ってもらっています。
牛は兵庫県の消費者団体に買ってもらっています。 農業の喜びはもちろん生産にもありますが、自分で手がけたものにおいしいという評価をもらえる、それも直接に聞けるというのが一番の楽しみです。
奥様との出会いは?
私は神奈川出身、妻は埼玉出身です。知り合ったのは大学生の頃で、同じ勉強をしていました。
こういった生活をしていること、していきたいことをよく理解してくれて、結婚することができました。まだ、子供が小さい(3歳、1歳)ので、妻が農業に向けられる時間はあまり多くは取れませんが、それでも時間を作ってなんだかんだと手伝ってくれます。
今後はどういった計画ですか。
経営の計画というより人生をどう生きていくか、農業にどう携わっていくかということでしょうか。やはり子供もできて、生活設計ということを念頭に置かなければなりませんから、自分なりの経営計画はあります。
牛の部門としては、繁殖牛を今の倍(15頭)くらいにしたいですね。これに伴う自給飼料ということも考えますと、現在でも稲わらは全部収集していますし、粗飼料も半分は自給していますので、これを基本にしていきたいところです。
人とのふれあいも大切にしていきたいと思います。今までも、知り合いのお子さんや大学生がうちに来て泊まり、自然や農業を体験してくれています。いわゆるグリーンツーリズムっていうような感じでしょうか。こういった機会を通じて自然や農業について私の思いを聞いてもらったり、感じていってほしいと思っています。
「今の生活に満足ですか、止めてしまいたいと思ったことはありませんか?」とお尋ねしましたが、「一度もそんなことはありません。」とお二人から笑顔でお答えいただきました。(まったく、愚問でした。)
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