転換田を集約した自給飼料の生産と稲わら収集で資源循環 |
T牧場(T町) |
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取り組み項目 自給飼料の生産と稲わら収集 事例のポイント 牛群検定のデータを積極的に利用し、自家産牛の改良を主眼においた酪農経営である。経産牛頭数は33.4頭と小規模であるが、経産牛1頭当り8,400kgを搾乳する成績である。 経営地は、狭小な水田地域であり、決して農業に適している地域ではなく、転換田や耕作放棄地を集約して、自給飼料生産に取り組んでいる。 |
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地域の概要 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
平成の市町村大合併で生まれ変わったT町の東部は伊勢平野の一角を占めるが、当経営が位置する中勢部は、スギやヒノキが植林されている山間地域である。傾斜は比較的緩やかであり、基盤整備も進んではいるものの耕種農家では高齢化による耕作放棄も増えてきている。 畜産業は、銘柄牛の産地ということもあり肉用牛農家が16戸あるのに対し、酪農家は5戸のみである。市町村を境界せずに周囲の畜産業を眺めてみると、飼養規模は大きくないものの酪農家も点在している地帯である。 |
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経営の概要 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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取り組みの経緯 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
昭和63年に現在の牛舎を建築したが、敷地の背面には山が迫り限られた面積での建築となった。かつてのふん尿処理は、自己有の水田や畑に散布することで処理が可能であったが、牛群の成績が上がるとともに、家畜排せつ物の量も増え、限られた面積では対応が不可能になってきた。 ふん尿は、堆積発酵させる方法と、ビニール乾燥ハウスで乾燥させたものを混合し、堆肥化を行ってきた。 同時に周辺地域では、高齢化が進み稲作作業の受託をすることになってきた。このことから、これらの水田にも堆肥を散布し、稲わら交換を始めたり、耕作放棄地では牧草の栽培を始めたりしてきた。こういった請負作業が口コミで広がりながら、徐々に自給飼料栽培面積が増えていった。 |
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自給飼料の生産状況 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
自給飼料は、次表のとおりデントコーン、ソルガム、ヘイスーダン、イタリアンを栽培し、FRPサイロとラップを利用してサイレージとして調整利用している。
稲わらは近在の水田を中心に600アールから収集している。この面積の内520アールは他人の所有地であり、水稲作業の請負や堆肥散布で関係している。
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飼料生産に要する経費 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
1 飼料生産に要する施設、機械器具
2 自給飼料の生産コスト
家族労賃 粗飼料生産 7時間×460a=322時間 322時間×1,200円=386,400円 稲わら収集 6時間×10日=60時間 60時間×1,200円=72,000円 3 単位当たりの生産コスト
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家畜ふん尿処理・利用と環境保全 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
前掲のとおり堆肥化は、堆積発酵とハウス乾燥の方式で取り組み、稲作作業受託農家との契約により水田への散布作業を請け負っている。この散布作業は散布面積確保の意味合いも大きく無料で行っているが、契約地からは稲わらを収集している。 稲わらは、収集量の10%程度は敷料として利用し、90%を給与している。また、年によって必要以上の稲わらを収集できることもあり、他の畜産農家に販売することもある。 耕作条件の悪い遊休地を効果的に利用してきた結果、畦畔の管理も行き届くようになり農村景観の保持にも役立っている。 畜産から生じる堆肥を肥料として散布し、ここから稲わらを収集し、牛に給与するという資源の循環が体系化されている。 |
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事例の普及性 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
地道な努力を注いだ結果として現状の体制が確立された事例であり、努力を賞賛すべきである。 |