転作田での自給飼料栽培、稲わら収集、河川敷利用の優良事例 |
M牧場(T市) |
事例のポイント 集約化された水田から効率よく稲わら収集を行うと共に、経験を積んだサイレージ作成技術により良質な自給飼料を給与している酪農経営である。 |
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地域の概要 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
当地(旧H市は平成18年1月、旧T市等10市町村で合併)は県中勢部に位置し、かつては農業を主とする町であったが、交通の利便性の良さから、企業の立地が進んだ。雲出川の清流と青山高原といった自然環境にも恵まれている。青山高原では良好な風況条件を活かし、日本有数の規模を誇る風力発電施設が稼動し、新しいエネルギーの供給源として、または観光名所として注目を集めている。 旧H市における総農家戸数は、1,355戸で、この内専業農家は194戸、第1種兼業農家は、111戸、第2種兼業農家は631戸となっている。雲出川の豊富な水を利用した稲作や丘陵地では梨栽培が盛んである。 H市の農業及び畜産の概要については、次表のとおりである。 1)農業粗生産額(旧H市データH16〜H17)
2)畜産農家の戸数、飼養頭羽数(旧H市データH16〜H17)
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経営の概要 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
経営は、成牛40頭、育成牛20頭を飼育する家族労働力主体の酪農経営である。労働力は本人、父、おじの3人である。飼育方式は、繋ぎ飼いによるパイプライン搾乳である。 1)自給飼料の作付及び稲わら収集面積の内訳
この他にも河川敷を利用した共同地で牧草の栽培を行っている。
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取り組みの経緯 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
昭和33年に経産牛1頭を導入し、酪農経営を開始した。昭和42年に牛舎を新築し、経産牛14頭規模の経営となり、これが現在の経営の基礎となった。昭和44年、近隣の酪農家4戸と共同で雲出川河川敷を借り入れ、本格的な自給飼料生産に取り組んだ。昭和56年には、自給飼料生産総合振興対策事業の補助により、飼料生産機械、サイロ等を共同で整備した。 昭和60年には農業公社牧場設置事業により、牛舎を建設し、経産牛40頭規模となった。平成15年には、効果的な飼料給与と省力化を目的に、コンプリートフィーダーを導入した。 平成16年末ころから和牛のETに取り組み、年間25頭の生産がある。 共同で取り組んでいた自給飼料生産は、機械の更新等運営が困難となり平成16年の活動をもって終了した。 |
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自給飼料生産の現状と方向 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
自給飼料生産については、下表のとおりイタリアン、トウモロコシ、エンバクを栽培し、併せて稲わら収集にも積極的に取り組んでいる。
1)栽培時期 イタリアン:播種、10月〜12月、刈取、4月下旬〜6月上旬 トウモロコシ:播種、4月中旬、刈取、8月上旬〜8月下旬 エンバク:播種、9月中旬、刈取、12月末〜1月上旬 稲わら収集:10月上中旬 2)飼料生産用機械の整備 コーンハーベスタ、ブロードキャスタ、マニュアスプレダ、エアシーダ、 バキュームカー、ロータリ、ローラ、ブロア、カルチパッカー、 ドッキングローダ、ダンプ、テッピングワゴン、ロールベーラ、 ラップマシン(以上各1台)、軽トラ2台 3)自給飼料の生産コスト
4)単位当たりの生産コスト
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自給飼料生産・利用による効果 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
自給飼料生産、稲わらの堆肥交換等自然循環型の農業を目指している。ほ場の保全管理にも労力を惜しむことなく投入し、転作の一翼を担いつつ農村景観の保持にも努めている。 自給飼料生産を通じ近隣の酪農家や耕種農家との交流も継続できている。 |
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ふん尿の処理及び利用 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
近隣の関係する農地へ堆肥・尿散布をすることにより、堆肥化処理を省力化すると共に、自然循環型酪農の実践を実現している。季節的に堆肥をストックする時期もあるが、堆肥の総量と栽培面積とを比較すると堆肥の量が不足するのが現実である。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
成功の要因 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
大型機械による省力化が図られているため、労力、飼養規模、土地面積のバランスが取れている。 河川敷の利用は、立地条件にも恵まれ、当経営においては、早い時期から取り組んでいた。 |
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今後の展望 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
資源循環型農業を基本理念に粗飼料を生産し、給与するという飼育方法にこだわって酪農経営を継続していきたいことから、今後も、飼養規模や機械装備、労力等に見合った自給飼料生産や稲わら収集を継続していきたい。 栽培に当っては、飼料作物も連作に合わないものもあるので、イタリアン、エンバクを交互に栽培したり、品種の選定や良質種子の利用をしたり、土づくりに配慮し、良質な自給飼料を収穫・給与することを心がけて行きたい。 総合的に自給飼料生産を分析すると機械化体系がその多くの部分を支えていることから、近い将来の機械の更新も見据えた計画的な経営でありたい。 さらに厳しくなっていくと思われる畜産の環境問題に対して、自然循環農業をさらに拡げ自然と共に生きる酪農経営を目指したい。 |
ほ場で乾燥中の稲わら | サイレージ保管用のサイロ |