地域の耕地を守りながら土に立脚した酪農経営を樹立
O牧場(S市)
 
1 経営の概況
1 地域の概要

 当市は古くは東海道・参宮街道の宿場町として栄え、第二次世界大戦の頃には各種の軍需施設が建設されたことから、その後、工業都市として発展する基盤となり、自動車や電機関連企業を誘致し発展を遂げて生きている。

 農業では、水稲、茶、花木などの生産が県下トップであり、農と工との両輪で現在も発展する市である。畜産では県下有数の養鶏地帯であり、県下130戸の採卵鶏農家の内、28戸が当市にある。

2 経営の経緯

・昭和45年:父が経産牛10頭規模の酪農を開始
・昭和51年:現在の牛舎を建設。30頭規模
・昭和53年:自給飼料生産のスタート。
        自己有地2haにイタリアン、ソルガムを栽培。
        その後、近在農家から土地を借り入れて、
                    徐々に粗飼料生産面積を拡大。
・昭和54年:現経営主が就農した。

3 経営の規模

・経産牛30頭、未経産牛17頭(育成含む)
・つなぎ式、パイプライン搾乳方式
・粗飼料生産面積10ha
・経産牛1頭当り平均産乳量7,500kg
・家族経営(労働力4人:両親、夫婦)
 
2 飼料生産
1 給飼料の生産状況
品 種 面積(単位a) 10a当り収量 総収穫量
夏作 冬作
  内借地   内借地
トウモロコシ 500 400     6,000 300,000
ソルガム 500 400     4,200 210,000
イタリアン     500 400 2,500 125,000
カブラ     250   3,000 75,000
1,000 800 750 400   710,000

2 自給飼料の利用状況
作付作物 総収量kg DM量 TDN量 利用形態
トウモロコシ 300,000 79,200 52,200 100%サイレージ
ソルガム 210,000 64,890
33,180
37,170
22,050
50%サイレージ
50%生草
イタリアン 125,000 29,500
27,125
17,000
16,125
50%サイレージ
50%生草
カブラ 75,000 7,800 4,425 100%サイレージ
710,000 241,695 148,970  

・トウモロコシサイレージを通年給与することを基本に、各作物の刈り取り時期には、これらを青草として給与している。トウモロコシは8月の刈り取り時期に青草給与。

・5月から7月にかけては、ソルガム、イタリアンの青草給与。イタリアンサイレージは7月頃までの給与。ソルガムサイレージは、4月末頃までの給与。

3 飼料生産に関係する施設、機器具等
・トラクタ:3台 62PS、70PS、85PS
・FRPサイロ:30m3 2基、20m3 2基
・コンクリサイロ:15m3 2基
・軽トラック:3台
・バキューム:3,100kg 1台
・ライムソワ:1台
・フレールハーベスタ:105幅 1台
・アタッチローダ:2,000、1,800 各1
 
・鉄板サイロ:10m3 16基
 
・ダンプ:2トン 1台
・ワゴン:2,500kg 1台
・コーンハーベスタ:2条刈り 1台
・フロントバケット:1台
 
軽トラック以外はすべて償却済(軽トラック償却費40万円)

4 自給飼料の生産コスト
費 目 金 額 構成比
種苗費
肥料費
その他資材
雇用労賃
家族労賃
燃料費
減価償却費
修繕費
小農具費
借地料
212,150
63,000
458,000

3,504,000
191,400
400,000


495,000
4.0
1.2
8.6

65.8
3.6
7.5


9.3
合 計 5,323,500  100.0

家族労賃
4時間×365日×2人=2,920時間

5 単位当たりの生産コスト
区  分 牧草分
労賃含 労賃除
費用総額 5,323,550 1,819,550
収量1kg当たり 7.50 2.56
DM1kg当たり 22.03 7.53
TDN1kg当たり 35.74 12.21
 
3 自給飼料生産・利用による効果
 自給飼料の生産量は、給与の全量を賄うものではないが、トウモロコシを通年給与する体系で飼料費の削減にも寄与している。

 労働力のみから考察すれば、飼養頭数規模をさらに拡大することは可能であるが、飼料作物栽培面積と堆肥の還元面積等から、現状の規模でバランスを保っている。

 機械類は個人所有のものばかりであり、共同作業体系と単純平均等で比較すると、コスト面で劣ることも考えられるが、実際の機械耐用年数や修繕費が共同の場合と比較すると、大きな差が生じたり、作業可能日に制約がないことから、適期の刈り取り作業等の結果は、生産されるサイレージの品質にも表れ、実質的な内容では、共同よりも個人での対応に軍配が上がっているようである。
 
4 成功の要因
 土に立脚した酪農経営を基本として経営を維持していることが基本である。飼養規模、労働力、自給飼料生産等にバランスが取れていることが成功の要因であると言える。

 自給飼料生産用土地の確保は、当初から思うように展開できたものではなく、土地条件の悪い転換田を集約し、実績をあげてきたことから経営への信用が確立できた結果が、現在の自給飼料生産につながってきた。
 
5 今後の展望
 経営理念として、土作りに立脚した酪農を基本として経営を継続することは、今後も変わりない。

 経営規模は、家族で賄えることを基本としているが、両親の高齢化も視野に入れながら経営の展開方法を検討する時期に来ている。また、長男が就農するか否かも計画樹立には不可欠の条件である。この先数年の内にこれらの条件が決定されるはずである。

 飼料給与には、購入飼料にたよる手法、粕類の利用による方法、自給飼料の生産に取り組む方法等に大別され、牛舎構造や生産規模とともに選択の必要が生じる。

 今後の経営について、大まかな構想を立てるとなると、乳質を維持しながら、経産牛1頭当たりの乳量を1万キロに近づけ、さらに自給飼料用のほ場の集約化(概ね半径3km以内)を図り、サーレージ調整の省力化を図るために鉄板サイロからFRPサイロの利用率を高め、とう汰時の産次を5産程度にできる経営を目指すこととにする。