大規模繁殖肥育一貫経営における自給飼料確保の取り組み
H牧場(Y市)
 
1 地域の概況
 Y市は三重県北部に位置し、面積205.16km2で、地勢でも産業でも北勢地域の中心を占めている。

 市の名のとおり、古くから市場町として繁栄し、主要街道としての役目も担ってきたことから、この地方の産業の中心となってきた。陸上交通に加えて、海上交通も発展したことから、生糸の紡績を中心とした軽工業から工業化が進み、後には、機械工業や化学工業の発展へとつながり地域の産業を支えてきた。

 過去10年間の平均気温は15℃、年間降水量1,740mmであり、暮らしやすい気候でもある。

 農業は、市の西部に広がる耕地を利用して、各種の農作物が栽培されている。耕地面積は4,330haであり、水田が70%、普通畑11%、樹園地19%を占めている。

 農業の特徴としては、都市近郊農業の色合いが濃い。稲作が中心ではあるが、土地条件を生かした茶、ハクサイを中心とした露地野菜や都市近郊の有利性を生かした温室栽培の花卉、メロン、トマト等の生産も盛んである。市の農業粗生産額は、約92億円であり、工芸作物24%、米20%、野菜14%、畜産18%となっている。

 一方、家畜の飼養状況については、次表のとおりであり、各畜種共に飼養戸数は減少傾向が続いている反面大規模化が進んでいる。

表1 Y市の家畜飼養戸数及び頭羽数   (単位:戸、頭、千羽)
乳用牛 肉用牛 養豚 採卵鶏 ブロイラー
戸数 頭数 戸数 頭数 戸数 頭数 戸数 羽数 戸数 羽数
5 320 13 2,540 8 6,300 5 190 4 101

(第53次三重県農林水産統計年報)
 
2 経営の概要
 当経営は、黒毛和種繁殖肥育一貫経営であり、耕種部門では稲作にも取り組んでいる。

表2 経営概況
経営形態 黒毛和種繁殖肥育一貫経営
労働力 家族 2名(本人、妻)、パートタイム 1名
飼養頭数 肥育牛 200頭、繁殖牛 100頭
牛舎等 畜舎敷地 15,000m2、 畜舎7棟、堆肥舎等

表3 経営面積             (単位:ha)
区 分 経営面積
うち飼料作付面積
水田 転換田 草地 その他
自作地 0.5 0.5     0.1 0.4    
借地 4.5 4.5     4.5    
5.0 5.0   0.1 4.9    
 
3 自給飼料生産の取り組みの経緯
 資源循環型農業の実践を目標に、耕種農家との連携により「自給できる飼料は可能な限り自給(生産)する」という考えを基本に、地域に根ざした安定経営が継続できるように自立した農業を目指して、稲ワラ収集や自給飼料生産に取り組んできた。
 
4 自給飼料生産の現状
表4 自給飼料の生産
作付作物 作付面積 10a当たり収穫量 収穫量(生)
イタリアン 5.0ha 2,000kg 100t
スーダン 5.0ha 3,000kg 150t

 稲ワラ収集は50haで総収量200t、その他に麦ワラを40ha収集している。(麦ワラについては、他農場へ販売している。)

栽培サイクル
 ・イタリアン  10月〜11月 播種  年1回刈り
 ・スーダン    5月〜 6月 播種  年2回刈り

自給飼料生産関連機械等の所有状況
 トラクタ(3台)、トラック(3台)、ロールべーラ120幅、ジャイロヘイメーカ、
 ラッピングマシン、ショベルローダ、マニアスプレッダ、レーキ、
 飼料庫(300m2、500m2他)
 
5 自給飼料生産の効果
 目標とする資源循環型農業の実践として、経営内のみの効果ではなく地域農業と共に歩んでいることで地域の農業者他からも支持が得られている。

 稲ワラの市況価格が高騰してきているので、価格面からみても安定供給という効果が上がってきている。また、単に飼料費の節減というばかりではなく、消費者に安全・安心という面をアピールしていく効果も得たい。

 飼養する牛のうち、特に繁殖牛に対しては、良質な牧草を給与することで、十分なビタミンAが補給され、受胎率の向上や毛ヅヤが良くなってきている等の状態が確認できる。
 
6 ふん尿処理とその利用状況
 牛舎へはおが粉を敷料として利用しているので、堆肥化処理はふん尿混合方式となる。

 牛房から搬出された堆肥は、堆肥舎でホイールローダで切り返しを行い、堆肥化を促進している。

 完熟堆肥となったものは、全体のうち80%を自家利用(水田へ60%、自給飼料圃へ20%)し、残りの20%は、経営外での利用となり、地元の野菜農家へバラで出荷している。
 
7 成功の要因、普及性
 取り組みに当たっては、個人が大規模稲作経営農家と個別に十分な話し合い、稲ワラ収集と堆肥還元による資源循環型農業の必要性を理解してもらうことによって、その輪を広げてきた。このためには、耕種農家側の作業を優先して仕事の調整をすることで協力を得られるようにしてきた。

 機械装備は、早期から対応できていたので、特に労力面での負担はなかったというのが実感である。
 
8 今後の展望、課題等
周辺圃場の状況や気象の影響
 耕種農家の作業状況をみて調整を行い、稲ワラ収集等の作業を行っているが、農家により作業時期等に差があることから、収集時期にもかかわらず、水路にまだ水があったり、隣のほ場から漏水で稲ワラ収集ができなかったり、年によっては気象条件が悪く収集ができないというように、毎年、同じ結果を期待することが困難な状況もある。
  
遊休地の確保
 農村の景観上も荒廃地を放置しておくことはできない。遊休地を柔軟に貸し借りすることにより飼料用地の確保が重要であるとともに、集約することで省力化を進めていきたい。

 効率的な農地の利用のためにそれぞれの農家の協力が得られるように、中立的な立場で行政が調整を行い、農家間の疎通を図る支援が必要である。
  
行政の優遇策
 転作作物により、支給される補助金に差があることから、作付作物に偏りが生じ、畜産が望むような作物の推進が困難な場面に遭遇する。飼料自給率の向上施策と耕種農家への補助事業間の乖離を感じる。
  
地域のための努力
 地域の農業を守る必要性を感じながら取り組んできたが、今後も同じ目標を持って畜産経営に当たる。