転作田を有効利用した自給飼料栽培と稲ワラ収集 |
N牧場(M町) |
地域の概要 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
M町は、三重県南部の熊野灘沿いに位置する町であり、リアス式海岸が美しい景観美を作っているが、急峻な山が海岸沿いまで迫る土地である。 このような地勢であることから、二次三次産業は発展しにくく、主産業は旧M町ではミカンの栽培が、また当地(旧N町)では、沿岸漁業が盛んであるが、人口の減少や住民の高齢化が進んでいる。 年間の平均気温は、15.6度と温暖であり、年間降水量は、多雨で有名な尾鷲市の3,922ミリには及ばないものの2,272ミリである。 水田は、一ほ場の面積が小さいため、機械による省力化も困難で、放棄地も散見されるのが実情である。 畜産業は、かつて旧同町に酪農を営む農家も10戸程度あったが、平成に入る頃から廃業が進み市町村合併後の農業の姿をみると、現在では酪農家はなく、肉用牛農家が3戸、養豚農家2戸、採卵鶏農家が1戸、ブロイラー農家が1戸のみとなっている。 |
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経営の概要 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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自給飼料の生産状況 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
当町は、リアス式海岸へ急峻な山が迫るという耕作には不利な地勢であり、水田保有農家が所有する1戸当たりの平均水田面積は50aと小さく、かつ1ほ場の面積も3a程度の小さいものもある。人口の減少も避けられないのが現実であり、耕作放棄地もどんどんと広がっていった。 このような地域条件の中で、放棄された水田を集約することから自給飼料の生産に取り組み始めた。 自給飼料生産に取り組み始めた昭和53年頃は、肉用牛経営そのものや粗飼料生産という水田利用に戸惑う農業者が多かったことも事実である。借用に応じてもらえたのは、最も条件の悪い山間の小さな湿田が主であった。 条件の悪さを労力で克服し、荒れた農地を整備する必要があった。 粗飼料生産用のほ場面積は、昭和56年495a、その後、栽培用の機械化が進んだこともあって、57年以降は、概ね700a、現在では概ね800aのほ場を確保し利用している。 一方、稲ワラも約20haの面積から収集し自給している。 粗飼料生産は、イタリアン+ソルガム体系で、利用はサイレージに調整している。現状では、繁殖牛に給与する粗飼料は100%自給、肥育牛に給与する稲ワラも100%自給できている。 稲ワラの確保については、周辺地域の水田は面積も小さく大型機械での対応が困難なことから、距離にして50kmほど離れたM市を中心にして収集している。 ここ数年の収集面積は、天候に左右されることもあり、H13年6ha、H14年15ha、H15年8ha、H16年ゼロ、H17年22haである。 この事例の自給飼料生産、稲ワラ収集の成功の要因は次のように取りまとめられる。
当初の機械導入については、トラクタ、ダンプ、ジャイロヘイメーカー、バンカーサイロなど主な機械施設については補助金を利用したり、あるいは中古機械を購入したりするなど初期投資を抑えて低コスト化に努めてきた。 現在使用する機械の中にもこれらの初期に導入した施設や機器を利用しているが、これについては、日頃の整備点検を十分に行った結果である。 サイレージの調整は、バンカー式サイロを使用している。3.5m四方の大きさ、1.75mの深さをもつこのバンカーサイロには、自家製のアタッチメントをつけたパワーショベル(ユンボ)で牧草を詰め込み、圧搾作業をこなす。詰め込み具合には試行錯誤した経緯もあるが、良質で安価なサイレージが出来上がっている。 ソルガムの全量、イタリアンの約40%をこのバンカーサイロに詰め込んでいる。イタリアンの60%はラップサーレージの形態を取っている。 表1 自給飼料生産の現状
1 栽培時期 イタリアン ワセアオバ100% 9月〜11月播種 年2回刈り取り ソルガム BMRスイートソルゴー 4月〜7月播種 年1回刈り取り 稲ワラ収集 8月〜9月 2 飼料生産用施設機械の整備 トラクタ9台(19PS、22PS、25PS、31PS(2台)、45PS、49PS、75PS、79PS) ショベルローダ、ダンプカー3台(2t(2台)、4t)ホイルローダ、ブロードキャスタ、ロータリ2.2m幅、1.6m幅、手動散粒機、タイヤローラ、フロントローダ、スーパーカー(ハーベスタ)、ベールラッパ、パワーショベル2台(0.25?)、モアコンディショナ、ロールベーラ2台(0.9m3)、ジャイロヘイメーカ2台(3.1m、2.6m) 3 自給飼料の生産コスト
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自給飼料生産・利用による効果 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
自給率の向上による生産コストの低減を図ると同時に、地域における水田の生産調整の達成に寄与することで、耕種農家との連携が図られている。 また、品質の良い安全な稲ワラを自ら収集することで、繁殖肥育一貫経営による高品質和牛の生産を行っている。 |
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今後の展望 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
自給飼料生産・調整や稲ワラ収集について、現状では家族労働力で賄っているが、これも将来的にはその対応に無理が生じる時期が訪れるものと思われる。 稲ワラ収集作業については、臨時雇用で対応することも可能であろうが、この問題を安定的に対応するには、コントラクタの利用が有効であると考えている。県内では稲WCSに関係する体制が整いつつある事例も見られるが、条件等を当事例にそのまま当てはめることもできないきない部分もあることから、行政への問いかけも含めながら、経営に見合った体制の構築が必要だと感じている。 |