大家畜を活用した水田放牧の実証について | ||||||||||||||
中央農業改良普及センター 専門技術室 吉川 信夫 |
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この7月から県内3カ所において大家畜を活用した水田放牧(1カ所は畑)の実証を行っています。大家畜を使った水田放牧の主な目的としては耕種側では耕作放棄地の雑草対策と鳥獣害対策をねらいとしながら、畜産側では繁殖牛などを活用し飼育管理の省力化、飼料費の低コスト化があります。 現在主に放牧に使われている牧柵には設置が容易なポリワイヤー電気牧柵と太い高張力線の2つの方法がありますが、今回県内で実証している牧柵は、耐久性もあり脱柵防止機能を高めしかも低コストで設置が可能な太い高張力線を用いた牧柵を設置しました。 大家畜を使った放牧は県内では初めてで、今年度はあくまで1〜2ヶ月程度の試験放牧としての取組みですが、これまでのところ当初懸念された野草をはたして放牧牛が採食するかどうかついても概ね順調に経過し、放牧した牛が馴れだすと徐々にセイタカアワダチソウやクズ(葛)などの雑草を好んで食べ、1ヶ月も経つとそれまで生えていた雑草の6〜7割は牛が食べ尽くし雑草対策としての放牧は一定の効果がみられ、さらに放牧中の粗飼料給与は野草のみになるため飼料コストの削減にもつながっています。獣害への効果については放牧実証圃の周辺には放牧以後に鹿やイノシシの侵入は見られなくなっており獣害への効果も上がっております。 今後へ向けた課題としては放牧前の的確な馴地の実施、放牧牛が食べる牧草や野草の十分な確保、給水のための水源確保、アブなどの害虫対策、周辺住民の理解と牛の脱柵や感電などの事故防止があげられます。 |
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馴地作業の実施 (鈴鹿市八野地区) 放牧の前に飼育牛舎の隣で電気柵への馴地を行い牛が電気柵に警戒し脱柵しないよう馴れさせておきます。 |
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放牧予定地の雑草発生状況 (鈴鹿市八野地区) 放牧前はセイタカアワダチソウや クズが繁茂した状態でした。 |
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放牧場へ繁殖和牛を搬入 (鈴鹿市八野地区) 放牧場へ2頭の繁殖和牛を搬入、雨避け対策として簡易な小屋を設置しています。 |
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放牧約1ヶ月後の圃場の状況 (鈴鹿市八野地区) 当初、繁茂していたセイタカアワダチソやクズはほとんど食べつくされました。 |
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変圧用の電気牧柵器 太陽電池パネルが発生した12vの電圧を7,000vまで変圧し、1秒間隔で高張力線へ通電しています。 |
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小型太陽電池パネルを設置 小型の太陽光電池パネルを放牧場に設置し通電用の電気を得ながらバッテリーに充電を行っています。 |
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褐毛和牛繁殖牛の放牧状況 (伊賀市白樫地区) 伊賀市白樫地区では青蓮寺開畑地の耕作放棄地で褐毛和牛繁殖牛の放牧が行われています。褐毛和牛は特に食欲旺盛な牛で開畑地の雑草を約1ヶ月でたべてしまいました。 |
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伊賀市での和牛繁殖牛の放牧 (伊賀市山畑地区) 伊賀市山畑地区では和牛繁殖牛を使った放牧が行われています。簡単な日避けと配合飼料給与のための桶を設置しています。 |
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アブなどの簡易害虫捕獲器を設置 放牧場にはアブなどの吸血性害虫が多くいるため、簡易の害虫捕獲器を作り現場に設置して対策を講じています。 |
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