食品廃棄物の実態と
食品リサイクル法への対応

東京農業大学 教授 牛久保明邦

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1. はじめに

 わが国の廃棄物排出量の現状は、経済状態が極めて冷え切った状況にあるなかで、かつてのバブル景気時代が生み出した「大量生産、大量消費、大量廃棄」の社会構造から脱却していない。これは廃棄物の総排出量から見て取れる。ここでは、21世紀に向けた循環型社会の構築を目指すために「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」(通称:食品リサイクル法)が平成13年5月に施行された。そこで、この法律に関連する食品廃棄物である一般廃棄物及び産業廃棄物の排出実態と食品リサイクル法への対応について述べることにする。


2. 日本の廃棄物排出量の実態

2.1 一般廃棄物(ごみ)

 一般廃棄物の排出量の推移は図-1に示す通り、バブル経済終焉の平成2年に年間排出量が、5,000万トンの大台に乗り微増減はあるものの、具体的な減少傾向の兆しは見えていない。平成10年における排出量は、約5,160万トンであり、前年度約5,120万トンを上回っている。この排出量を国民 一人一日あたりの排出量でみると1.118s(前年度 1.112s)でその内、食品廃棄物の占める割合が重量比で約30%であり、更に25%が容器包装廃棄物と推定されている。

 一般廃棄物の処理状況は、直接埋め立て、焼却、焼却以外での方法で中間処理されるものと資源化がある。資源化には、直接資源化による資源量と焼却処理・中間処理施設での資源量と団体等の集団回収によるものがある。平成10年度の処理状況は、年々埋め立て量の割合が減少している直接埋め立てが約382万トン(7.5%)、焼却されたものは、全体の77.2%に相当する約3,981万トン、焼却以外の中間処理されたものは約587万トン(11.4%)であった。また、資源化率は、12.5%であった。最終処分場で最終処分された量は、約1,135万トンで、平成9年度が約1,201万トンで年々減少傾向にある。

2.2 産業廃棄物

 産業廃棄物の排出状況は、平成2年度以降ほぼ横這いの状態が続き、平成4年度に4億トンの大台にを越えて以降隔年で4億トンを切ったり、越えたりの傾向で推移している。平成10年度の排出量は、約4億800万トン(前年度約4億1,500万トン)に達しており、一般廃棄物の約8倍に相当する量である。

 種類別の排出量は、汚泥(46.3%)、動物のふん尿(22.7%)及びがれき類(13.9%)で実に上位3品目で総排出量の約8割を占めている。食品リサイクル法で食品廃棄物として対象となっている動植物性残さは、約397万トン(全体の1.0)排出されていた。また、業種別排出量は、多い順に農業(22.8%)、電気・ガス・熱供給・水道業(21.4%)および建設業(19.%)である(図-2-a,b)

 食品関連企業から排出される廃棄物量は、食品製造業での排出量が約1,094万トンで全体の2.7%、と飲料・たばこ・飼料の約461万トン(1.1%)の約1,555万トンとなっている。

 平成10年度の産業廃棄物の処理状況は、脱水・乾燥・焼却処理等中間処理されたものは全体の約74%の約3億100万トンであり、それによって約1億2,200トンにまで減量化された後、その内から約9,300万トン(全体の22.8%)が再生利用(リサイクル)され、約2,900万トンが最終処分に廻っている。また、直接再生利用量が約7,900万トン(19.4%)で、直接及び中間処理後の再生利用量を合わせると全体の42.2%にあたる約1億7,200万トンが再生利用されていることになる。直接及び中間処理後の再生利用量を除いた最終処分量は、直接最終処分量の約2,900万トンと中間処理後最終処分量の約2,900万トンの合計5,800万トン(14.2%)である。

 産業廃棄物の排出量を排出地域別にみると、関東地域が全体の33.0%が最も多く、全体の比率でその排出量が10%を超えている地域は、中部(14.5%)、近畿(13.9%)、九州(12.4%)であった。


3. 食品廃棄物の発生量とリサイクルの状況

 ここでいう食品廃棄物とは、後述する食品リサイクル法で定義されている「食品の製造や調理の過程で生ずる動植物性残さや、食品の流通過程や消費段階で主ずる売れ残りや食べ残し」とする。

 食品廃棄物には、家庭から排出される一般廃棄物と食品流通段階や外食産業の段階で排出される事業系一般廃棄物と食品産業で製造、加工の過程において発生する産業廃棄物である動物性残さが該当する。これらの排出量を合計すると、表-1に示す通り約2,000万トンが発生していると推計され、食品廃棄物のリサイクル率は、肥料、飼料等への利用が約9%に過ぎない。


4. 食品リサイクル法制定の背景

 廃棄物の発生が抑制されていない現状にあって、廃棄物の処理として行われている焼却に伴って非意図的に発生するダイオキシン問題による焼却施設と水源や地下水汚染が危惧されることから最終処分場の新設許可条件が強化され、平成11年度の新設許可件数が激減している状況にある(図-3、図-4)2)

 更に、廃棄物に係わる最近の法律関係について平成5年度以降を見ると次のようになる。平成5年に施行された「環境基本法」の理念にのっとり、循環型社会の構築を目指すため国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を明らかにし、リサイクルの推進等によって廃棄物の排出量の削減等廃棄物問題に取り組むため、平成12年6月「循環型社会形成推進基本法」が制定された。また、この法律の総合的かつ計画的な推進を図るため「循環型社会形成推進基本計画」を定め、更に具体的な実施策として既に平成12年4月に完全実施された「容器包装リサイクル法(通称)」をはじめ「家電リサイクル法(同)」、「建設リサイクル法(同)」及び「グリーン購入法」のほか今回取り上げる「食品リサイクル法(同)」が平成13年5月施行された。


5. 食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(食品リサイクル法)3)

 食品廃棄物は、食品事業者の活動のみならず国民の日常生活からも多量に発生している(表-1)。したがって、食品廃棄物の排出の抑制を図っていくためには、消費者、食品関連事業者(食品の製造、加工、卸売または小売を業とするもの及び飲食店業その他食事の提供を伴う事業を行う者、ここでその他食事の提供を伴う事業とは、政令で旅館業、結婚式場及び受託給食業が「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律施行令」(政令第2条第4項第2号)によって加えられ、国、地方公共団体等食品廃棄物に係わる各主体が一体となってその発生の抑制、再生利用及び減量に努めることを目指している。

 前述したように食品廃棄物とは、図-5に示すものをいい、更に「食品循環資源」とは、食品廃棄物の内、肥料や飼料等の原材料となるものをいう。

 法律の目的を達成するために、国は食品循環資源の再生利用等を促進するに必要な資金の確保、情報の収集整理、活用または新規開発等必要な研究開発に努めるほか、教育活動、広報活動を通じて、国民の理解と協力を求めるように努めること。地方公共団体は、発生の抑制と再生利用製品の使用が責務とされる。更に食品関連事業者は、食品の購入またわ調理の改善により食品廃棄物の発生抑制に努め、再生利用により得られた製品の利用に努めることを責務としている。

 ここでいう「再生利用等」の手法とは、

 1 発生抑制 食品廃棄物等の発生を未然に抑制すること。
 2 再生利用  食品循環資源を飼料、肥料その他の製品の原材料として利用することとなっており、その他の製品原材料として油脂及び油脂製品並びにメタンが政令(法2条第5項第1号)によって定められた。
 3 減  量  食品廃棄物等を最終的に処分する前に脱水、乾燥、発酵または炭化により、食品廃棄物等の重量を減少させることである。また、この順位は、食品廃棄物資源の再生利用等の手法に関する優先順位である。

 この再生利用等を総合的かつ計画的に実施するため、各主体がその取り組みを行うに当たり指標となる「食品循環資源の再生利用等の促進に関する基本方針」を策定し、公表されている。これによると、法律の円滑化を図るため次のような目標値や制度を導入している。この基本方針により取り組む処置を定め、具体的な再生利用等の目標値として食品関連事業者は食品循環資源の再生利用等の実施率を平成18年度までに20%に向上させることを目標とする。平成13年度に既にこの目標を上回る実施率を達成している食品関連事業者あっては、現在の実施率を維持向上させることとしている。なお、この目標については、目標の達成状況、社会経済情勢の変化等を踏まえて必要な見直しが行われる。すなわち、発生抑制、再生利用及び減量のいずれかを単独あるいは組み合わせによって再生利用率を達成するために自らもしくは第三者に委託して実施することとしている。

 食品関連事業者の再生利用等の取り組みが不十分な場合には、主務大臣により、勧告、公表、命令の処置が行われる。また、命令に従わない場合には罰則が適用される。これが適用される要件は、政令第9条第1項で定められ、年間の食品廃棄物等の発生量が100トン以上の食品関連事業者としている。そこで、事業者が再生利用等の円滑化を図るため次のような制度を導入する。

 1) 登録再生利用事業者制度:
 食品関連事業者の委託を受けてリサイクル事業を行う再生利用事業者の主務大臣による登録制度を設け、優良なリサイクル(再生利用)事業者の育成を図と共に食品関連事業者にとっては優良なリサイクル事業者の選択を容易とする。
 2) 再生利用事業計画の認定制度:
 食品廃棄物排出者(食品関連事業者等)と再生事業実施者(リサイクル業者)及び利用者(農林漁 業者等)が共同して再生利用の事業計画を作成した場合について主務大臣の認定制度を創設する。
この認定要件は、
 (1)基準方針に適合すること。
 (2)肥・飼料化等の事業が確実に実施できること。
 (3)肥飼料等の製造量に見合う利用を確保が確実であること。

  また、広域的な再生利用の実施が必要であることから、つぎのような特例が認められる。

(1)廃棄物処理法の特例:
  荷卸しに係る一般廃棄物の収集運搬業の許可不要
(2)肥料取締法および肥料安全法手続き簡素化:
  登録再生利用事業者等に対し製造、販売の届け出が不要となる。

6. 堆肥(肥料)、飼料等への循環資源の利用状況

 食品廃棄物は、食品産業から排水処理にともなって発生する汚泥のリサイクル同様堆肥(コンポスト)化が主流であり、次いで肥料化あるいは飼料化する事例が一般的である。しかし、わが国における堆肥等循環資源の利用状況は、農業従事者の高齢化、兼業化に伴う農業人口の減少や耕作地面積の減少、化学肥料利用による施肥管理、コンポスト需要量の減少や輪作体系の崩壊に伴う農法の変化等によってその利用量の減少が顕著である。また、それらに加えて完熟堆肥の定義の不確実さ、堆肥中の肥料成分含有量が不安定で、堆肥の品質が一定でないこと及び重金属や有害物質等が含有することの不安等々も減少傾向の理由として挙げられる。

 稲作における堆肥施用量の推移を見ると、昭和40年に約507s/10a施用されていた堆肥が、平成9年には約125s/10aの施用量に過ぎない(図-6)

 このように堆肥の原材料である食品廃棄物は、他の有機性廃棄物同様毎日排出されるのに対し、堆肥の施用は化学肥料と異なって年間を通して流通、利用されているとはいえ、その最大利用ピークは春蒔き時期であり、ついで秋蒔きの年間二回である。更に、下水道、し尿等の処理施設からの汚泥等他の有機性廃棄物が堆肥原料として競合することが流通上の問題となる。

 飼料においても、肥育豚一頭当たりの残飯給餌量の推移を見ると、昭和40年の約206s/頭の給餌量であったが、平成9年には約6s/頭に激減している(図-7)。このことは飼料自給率の推移が昭和40年に54.6%であったものが、平成9年には25.2%とほぼ半減し、海外飼料への依存度が極めて高くなっている。

 このことは、養豚はもとより家畜の飼料は、品質が安定し、安価で安定供給される海外生産飼料に依存し、能率的な生産システムが既に確立され、高品質の肉質や牛乳等の畜産物が供給される状況下にある。このようなことから、食品循環資源による飼料の食い込む余地が極めて困難な状況にある。


7. 食品リサイクル法への対応

7.1 用・排水量削減対策・・・食品廃棄物の発生抑制と減量に貢献

 食品産業は、水の産業と言える程用水の使用量は極めて多い。そこで、用水量の削減は、食品廃棄物の発生抑制と含水率減少による減量化並びに排水量の削減につながる。食品廃棄物の含水率を低下させることは、食品リサイクル法の再生利用等の行為に関連する他、最終的に処分する前の減量は、乾燥や焼却の際にエネルギー使用量の削減に大きく関係することになる。

 そこで従来の製造工程を見直すことにより、廃棄物並びに排水の多量発生工程を明らかにし、改善を検討する必要がある。また、容器に付着や床に落ちた固形廃棄物を水圧利用によって洗浄する事例が多い。工場内洗浄作業の際に固液分離を徹底することにより、節水並びに固形物の水分削減と篩別作業の工程軽減及び排水処理施設への排水量や懸濁物質の減少による固形廃棄物負荷量の削減に大きく貢献することになる。

7.2 食品循環資源の品質安定と量の確保対策・・・再生利用対策

(1) 異物混入の防止と廃棄物分別の徹底

 食品廃棄物の再生利用等で、飼料化あるいは肥料化を試みる際に食品循環資源が有すべき条件は、異物混入防止と分別の徹底が不可欠である。特に、飼料化においてはこの対策が生命線となる。飼料化は、堆肥化と異なり家畜あるいはペット等の動物に給餌するものであり、異物の混入は致命的である。特に、食品廃棄物の内、流通段階と消費段階で発生される事業系一般廃棄物に混入される金属製のフォーク、ナイフ類、割り箸、王冠、たばこの吸い殻、楊枝や手拭きのカバー等多様な異物が混入する危険性が高い。また、飼料化は飼料安全法に準じた栄養価を確保する必然性があり、食品循環資源といえども全てを飼料に利用することはできない。そこで発生時において分別を徹底することは、品質の安全性の上で重要である。

(2) 食品循環資源の質的及び量的確保

 食品循環資源をコンスタントに確保することは、量及び質の安定化と製造量が確実に計画生産するために必要なことである。したがって登録再生利用事業者制度に登録された優良リサイクル業者を選定し、回収、運搬および再生利用等を実施する。さらに再生利用等を推進するためには、リサイクル製品の利用を含めた計画的な再生利用の実施が重要で、食品関連事業者が集まり、協力することによって再生利用事業計画の認定制度を導入し、廃棄物処理法の特例を受けられる等優位な立場を確保すべきである。

7.3 利用者である農林水産業とのコンセンサス・・・再生利用製品の需要拡大

 食品循環資源のリサイクル製品の需要拡大を法律に求めるには限界がある。そこで、堆肥化の場合を事例として需要を拡大するために次のような対策が必要不可欠である。

(1) 堆肥腐熟度判定の確立・・・完熟判定、品質保証

 堆肥の完成度を示す腐熟度の判定については、すでに数多くの判定法が提案されている。しかし、これらの判定法は原材料が異なると使用できない場合もあり、高価な分析装置や特殊な技術が必要であったりして普遍的な判定法がない。その結果、粗悪品が流通し作物に実害が発生する事態も発生している。そこで、従来提案された判定法を分類して信頼度を高めること、あるいは堆肥の品質評価ができる簡便で確実な腐熟度判定法を確立する必要がある。

(2) 土壌調査の実施とモニタリング調査の継続

 農業の基盤は、土壌である。土づくりは極めて重要なことである。特に農耕地は、廃棄物の処理処分場ではなく、生産の場であることから安全性が高く地力の増進が図れる食品循環資源を有効利用し、化学肥料一辺倒の農法を改革すべきである。有機資源である堆肥の農耕地施用は、炭素源の土壌への富加が前提である。したがって、土壌への施用は、炭素換算で施用量を決定すべきである。そこで、堆肥に含有されている窒素をはじめとする肥料成分の持ち込み量を考慮して化学肥料と併用することにより化学肥料を削減し、作物栽培に適した施肥設計を作成する。すなわち施肥設計は、堆肥中の炭素含有量を基準に土壌中の肥料成分の必要量を算出すべきである。ところが、わが国の農耕地土壌中の有機物含有量に関する詳細な情報が十分でなく、資源である有機物の受け入れ許容量についても明確でない現状にある。そこでわが国のタイプの異なる土壌中の有機物含有量を中心とした土壌調査を実施することを提案したい。更に、堆肥等の有機物施用は、連年多量施用が原則であり、施用前後のモニタリング調査を継続的に実施して、特に重金属等の有害物質の集積及び肥料成分の含有量等の土壌診断が必要である。

(3) 有機資源の使用マニュアルの策定

 従前は原料を問わず堆肥は、特殊肥料に分類されていた。平成12年10月の肥料取締法の改正(表-2)によって、汚泥を原料とした汚泥堆肥、汚泥肥料は普通肥料に格上げとなった。ここで、汚泥以外を原料とした堆肥すなわち食品廃棄物(食品循環資源)や家畜ふん尿等を原料とした堆肥は、従来通り特殊肥料の範疇に区分されている。しかし、今回の改正で特殊肥料の堆肥には、品質表示基準を制定し、肥料の種類・名称、含有成分量、原料の種類等を表示することが決められた。これによって市場に流通する堆肥製品の成分含有量が把握できることとなり、前述した土壌調査が実施されたとすれば、その結果を踏まえて土壌タイプ別、作物栽培別、気象条件等立地条件が異なる農耕地や牧野毎の堆肥施用可能量や、施用方法並びに施用時期等農業者を対象にした施用マニュアルの策定が可能となる。このことは、食品廃棄物を原料とした堆肥等のコンスタントな利用システムが構築されることとなり需要の拡大が見込まれる。

(4) 環境保全型農業の確立と輪作体系の復活・・・化学肥料との併用

 土壌に堆肥化された有機物が加えられるとそれらの構成成分である炭水化物、タンパク質、糖質、脂質やリグニン等は、土壌中の小動物や微生物郡の働きによって複雑な分解と合成の過程を経て、各種の黒色無定形の中間代謝物質である「腐植」と呼ばれる土壌固有の有機物となる。しかし、このような腐植物質の生成には早くて3〜5年の年月を有する。このようにして生成された土壌中の腐植はその機能によって2つに区分される。そのうちの1つは、土壌生物の分解に対して安定な成分で、長期間土壌中に留まり、陽イオンや水分を保持し土壌の重要な働きである貯留機能を発揮する物質となっている「耐久腐植」である。もう1つは、土壌生物によって容易に分解され、二酸化炭素やアンモニア態窒素等の各種の無機成分が生成されると共に団粒構造を形成し、良好な土壌環境維持する「栄養腐植」に区分される。このことから、堆肥を施用することにより土壌の陽イオン交換性容量を増大させる働きがあることから「保肥性」が高まり、団粒構造の形成による「保水性」や微生物相の改善や土色が黒味を帯びることによる「保温性」が良好となる等顕著な効果が現れる。しかし前述したように堆肥は、連年に多量施用するのが原則であり、有機物である堆肥が分解され植物体の養分となるためには、栄養腐植に変化し無機化されて水溶性成分になる必要がある。したがって、堆肥を施用してすぐに種々の効果が発揮されるわけではなく、当然の事ながら長年の月日を要する。すなわち即効性である化学肥料に対してその効果が遅れて発現することから遅効性である。したがって肥効面で化学肥料と棲み分けができることから肥料の併用が可能となる。

 更に、環境保全型農業は、有機物を資源としながら裏作を取り入れた土地利用による作物体系を復活させる必要がある。裏作での小麦等を栽培する作物体系を復活させることにより、過剰肥料成分の吸収と食糧自給率を高めるため、特に食品循環資源利用による輪作体系を復活させることを望むものである。

7.4 食品廃棄物の循環利用システムの構築

 食品産業の特徴は、中小零細企業が多く、個々で発生する食品廃棄物量は再生利用するためには少な過ぎるため、コストがかかる上に、原料が多岐にわたることから品質の振れが大きくそれに伴って再生利用化製品の品質が定まらない。その結果、再生利用製品の利用者である農林水産業者にとっては極めて不都合である。そこで、食品廃棄物排出事業者者がまとまることによって廃棄物の量を確保することと、質の安定化のために異業種食品関連事業者が連携した組織化が必要である。そのため今回の食品リサイクル法には、その方策として再生利用等を促進していくための「再生利用事業計画の認定制度」を打ち出している。これは、食品関連事業者等(廃棄物排出者)、再生事業の実施者(リサイクル業者)及び利用者(農水産物生産者)が肥・飼料化等の事業を確実に実施できると認められること、再生利用により得られた肥飼料等の製造量に見合う利用を確保する見込みが確実であって実施計画の作成を行い再生利用の実施を推進することとしている。これによって食品関連事業者は、農水産生産者が生産した生産物を購入することによるクローズドが成立すればこれはまさにフードシステムの確立である。このフードシステムの確立、維持のためには再生利用製品の飼料、肥料並びに農水産生産物の両者の流通に関与が可能である農協、経済連の役割は極めて重要であり、積極的な参加が望まれる。

7.5 再生利用等の考え方食品循環資源リサイクル化の順序

 食品リサイクル法では、食品廃棄物のうち肥料、飼料等の原材料となるような有用なものと規定されている食品循環資源の再生利用等をしようとする場合の順序は、次のように考えるべきである。食品廃棄物は、動植物性残さや売れ残りや食べ残しであり、極めて豊富な栄養分を含んだものである。したがって本来これらを廃棄物と称するにはいささか抵抗感がある。そこで、食品循環資源のリサイクルの優先順位は、先ず飼料化である。家畜を英語ではライブストック(livestock)という。これを分解すると「ライブ」は生きているという意味であり、「ストック」とは貯蔵あるいは財産ということになる。すなわち家畜を飼育するということは、人間が生存するために生きた食料を貯蔵する手段として家畜を飼肥育しているわけである。家畜に肉あるいは乳類を食料として担保するためには、徹底分別して最大限活用できる食品循環資源の飼料化が序列のトップに位置されるべきである。飼料化による給餌量の拡大は、飼料自給率の向上に貢献することになり、しいては海外飼料による家畜ふん尿の削減になり得る。そして、次に飼料化不可能な食品循環資源について、堆肥化あるいはメタン発酵でのメタンガスによるサーマルリサイクル等の再生利用化が準ずるべきである。メタン発酵は、通常高濃度有機物を含む排水処理に用いられる処理法である。排水中の有機物が嫌気性微生物の生物化学的反応をよって処理される際に発生するメタン、二酸化炭素を主成分とするバイオガスを回収してエネルギーを燃焼することによって発電あるいは燃料電池等として活用するものである。

 また、最近の技術として廃棄物を糖化して糖を工業製品原料として生成し、さらに生分解性プラスチックの原料やブタノノール、メタノールを作る技術が開発されており、食品廃棄物の次期再生利用製品として加えられる可能性が近い。


引用文献

1) 厚生省編:平成13年度循環型社会白書
  循環型社会の夜明け-未来へと続く挑戦-、(株)ぎょうせい(2001)

2) 農林水産省:食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律 
  21世紀に向けた循環型社会の構築を目指して-(パンフレット)(2000)