2.ドイツの養豚
ドイツは世界有数の養豚国である。豚肉生産量は、中国、アメリカ合衆国についで第3位の生産量を誇る。1999年の日本の豚肉生産量はおよそ1283千トンだったのに対し、ドイツの生産量は3940千トンで日本の約3倍の生産量となっている。国民一人当たりの年間供給量でみると、日本の16.2キログラムに対してドイツは55.7キログラムと3.4倍になっている。つまり、ドイツは日本に比べて豚の生産も3倍なら食べる量も3倍という具合になっている。ただ、同じヨーロッパの中で豚肉の消費を比べると、デンマークやオランダの方が一人当たりの消費量は多くなっている。 さて、養豚国ともいえるドイツの生産構造はどのようになっているのであろうか。飼養農家数と頭数について簡単にみておくことにしたい。 表1は、肥育豚についてであるが、飼養経営数と飼養頭数を頭数規模階層ごとに整理したものである。これをみるとひとくちに養豚農家といっても1、2頭の小規模なものから1500頭を越す大規模なものまで様々であることがわかる。飼養農家の約55%が10頭に満たない小規模なものであり、とくに5頭に満たない極めて小さな規模のものが約4割を占めているのである。しかしながら、飼養頭数でみると国内の肥育豚の約4割が600頭以上の大規模経営によって飼養されている。つまり、3%に満たない大規模飼養経営が国内の約4割の肥育豚の飼育を担っている構造になっている。逆に肥育豚の飼養農家の4割を占めていた飼養規模が5頭に満たない小規模層の飼養頭数シェアは、国内の1%ほどにしかならない。 表1、肥育豚の使用経営数と飼養頭数
資料:ドイツ連邦農林統計書(1998年度) このように、ドイツの養豚は、穀作を主にしながら豚を何頭か飼養するというものから大規模専業の養豚経営まで幅広く存在するが、1〜2頭という小規模な飼養農家が今なお数多く存在するところにひとつの特徴をみいだすことができる。これらは、自給的な意味合いをもっており、「趣味で飼っている」という表現がしばしば飼養農家の口から出てくる。農家の庭先で豚がつるされ、やってきた肉屋に解体されソーセージなどに加工されるという風景を見かけることがあるが、そんな自給的意味合いを持つ飼養農家が現在も少なからず残っているのである。しかしながら、産業として養豚をみた場合、その担い手となるのはこのような小規模飼養農家ではなく、大規模な養豚経営である。 |