5)プラントの収益性を高める混合発酵

5−1)収益性の追求戦略

 バイオガスプラントの導入は多額の投資を必要とする。いくら売電価格が高くなったとはいえ、プラントの収益性を上げなければ大型投資は採算が合わなくなってしまう恐れがある。

 バイオガスプラントの収益性を高めるには、

  (1)バイオガスの発生量を増大
  (2)副収入の増大   
    ・有機廃棄物の引取収入の増大  
    ・休耕奨励金

 といった方策が考えられる。いずれにしても、キーとなるのは混合発酵であり、家畜の糞尿にどんな有機物を混ぜてガス発生量を増大させるかがポイントになる。現段階での動きをみると、有機廃棄物の引取料金の水準は先ほど指摘したように下がってきており、なかでも食品残渣物などはもともと衛生処理が必要であるうえにBSE騒動を背景に一層神経を使うようになり、経済的な魅力が薄れてきたといえる。それに対して、休耕地に作付けしたコーンなどは、休耕奨励金が受給できるうえにバイオガス発酵に利用できることから関心がかなり高まってきている。このようなことから、最近では混合発酵物を経営内で内給する傾向が強くなってきている。

 先ほど事例でみたように、バイオガスプラントの経済的便益の9割が電気と熱のエネルギーに由来するものであり、収益性の向上のメインとなる要因はバイオガスの発生量の増大ということになる。副収入の増加はあくまでも副次的なものといえる。発生ガス量の増大は、端的にいうとプラントの操業度を上げることを意味する。そのために、家畜の糞尿に有機廃棄物を混ぜてガスの発生効率を高める混合発酵が試みられている。とくに電力供給法の施行以来、売電が経済的誘因となり、混合発酵が注目を集めるようになったのであるが、循環経済・廃棄物法によって有機廃棄物の引取に対する対価収入が法的にはっきりと位置づけられたことの意義も大きい。

5−2)混合発酵の効果

 家畜の糞尿に有機物を混ぜてガス発生量を増大させる混合発酵は、バイオガスプラントの収益の大きさを基礎づけるものである。そこで、混合発酵がどれほどガス発生を高めるのか、技衝的な試験研究結果を概観しておきたい。

(1)家畜糞尿の利用

 ドイツに存在するバイオガスプラントの約3分の2は、牛の糞尿を発酵基質として利用しており、約15%は豚の糞尿を利用している。残りは、鶏または複数種の混合糞尿であるといわれている。

 糞尿からのガス発生量は家畜の種類によって異なるが、それは図9によって示されている。横軸に家畜別の頭数がとられているので、飼養頭数が与えられば1日当たりどれくらいのバイオガスが得られるかがわかるようになっている。

図9
図9 飼養家畜からのバイオガス量

 さらに、バイオガスの量がわかれば、それから得られるエネルギー量を知ることができる。一般的には、エネルギー生産量は日量のガス発生量とバイオガス1立方メートル当たりのエネルギー量を表す係数(6kwh/立方メートル)を乗じて求められている。例えば、乳牛150頭くらいの規模であれば、その糞尿から1日当たり250立方メートルくらいのバイオガスが得られるが、それをエネルギー化すると約1500kwhに相当するエネルギーとなるのである。

(2)有機物の利用

 しかしながら、家畜糞尿から得られるバイオガスの量は、他の有機物に比べて多くはない。図10は、有機物ごとに得られるバイオガスの量を比べたものであるが、家畜糞尿からのバイオガス発生量が如何に少ないかがわかる。最も大量のバイオガスが得られるのは、油脂類である。デントコーンもガス発生量が高く、牛や豚の糞尿の5倍から8倍の量のバイオガスを得ることができる。刈草なども1トン当たりのガス発生量でみれば、家畜糞尿の3倍から4倍に相当する。

図10
図10 投入基質別のガス発生量

 従って、発酵基質として家畜糞尿に他の有機物を利用することによってガス発生量を高めることが可能であり、プラントの稼働を高めることができる。さらに、農業経営外の有機廃棄物を利用する場合には引取料を得ることができることからプラントの収益性をさらに高めることができる。

 農業内部の発酵材料としては、例えば刈草、ビート・カブの葉、馬鈴薯の茎葉などが用いられる。またコーンに代表されるように休耕地に栽培されたバイオマスを利用することによってもバイオガスの発生を高める効果的な方法である。農業外からの発酵物には、食品加工業の加工残渣、市場の野菜屑、食堂厨芥、自治体が回収する刈草や家庭生ゴミなどが用いられている。