7)バイオガスプラントに対する助成政策の意義

 2000年の新エネルギー法以前の売電価格では、有機廃棄物の引取収入と投資補助によってバイオガスプラントの採算が保たれていたという指摘がある。売電価格が1kwh当たり20ペニヒに引き上げられた現在においては、採算性もかなり向上したものといえる。先ほどみた事例では、100大家畜単位で家畜糞尿のみの場合において損失がみられるだけで、その他のケースではすべて利益が出ていた。しかしながら、これらの試算は、3割程度の投資補助を前提としたものであった。そこで、先ほどとりあげたモデルの諸ケースについて補助金がなかった場合の収益を試算してみたのが、表7である。

表7 補助金の有無と利益の大きさ

  家畜
糞尿
家畜糞尿
+
デントコーン
家畜糞尿
+
厨芥
補助金
あり
100大家畜単位 -1,725 6,528 27,041
150大家畜単位 1,415 9,616 22,520
300大家畜単位 4,983 27,901 64,905
補助金
なし
100大家畜単位 -8,403 -2,544 13,304
150大家畜単位 -6,775 -842 14,330
300大家畜単位 -4,917 13,401 55,005

 100大家畜単位の規模では、家畜糞尿と厨芥の混合発酵でないと利益が出ていない。しかも、その利益も厨芥の引取料金が1割(トン当たり3マルク)下がれば消えてなくなり、損失が出てしまう。有機廃棄物の引取料金が下落する流れの中では、100大家畜単位の規模では、3割補助程度の投資補助があっても採算を見込むのは難しいとみられる。

 150大家畜単位の規模においても、「家畜糞尿」「家畜糞尿+デントコーン」では損失が出て、「家畜糞尿+厨芥」で利益が出るという結果になっている。この規模では、厨芥の引取料金が半額のトン当たり15マルクになっても若干の利益が出るが、トン当たり10マルクという3分の1の水準になると損失が出る。

 300大家畜単位という大規模になれば、「家畜糞尿+デントコーン」でも利益が出るようになるが、「家畜糞尿」のみでは損失が出てしまうのである。従って、投資補助がないことを想定すれば、家畜糞尿のみのバイオガスプラントの稼働ではたとえ大規模であっても利益を得ることが困難であり、小規模プラントでも利益を得ようとすれば、厨芥もしくはそれと同等以上のガス発生効率の高い有機物との混合発酵を考えなければならないのである。