「今、問われる生産者の社会的責任」と題して研修会を開催しました

 三重県畜産協会では、平成16年度から「畜産物安全・安定供給相互理解体制推進事業」に取り組んでいます。

 さて、食物への安全性を求める社会情勢が強まる中で、安全に安心を乗せたいわゆる顔の見える関係が非常に強く求められてきています。

 畜産サイドからは個々の生産物に付随する情報を開示し、消費者に広く深く理解を求めて行きたいところですが、両者が持つ相互の情報レベルは残念ながら同一ではなく、知識や情報に基づいた信頼関係が樹立されているとは、言いがたい場面も多々あるように思われます。

 このことから、生産と消費やこれらを取り巻く関係者を面的に捉え相互理解の下で確固たる信頼関係を築き、物と心のやり取りを行うことが、基盤の強い農畜産業を育成していくことと思われます。

 このため本事業を実施することにより、畜産物等の生産、流通、消費等に関係する者に対して、知識の習得や意見交換等の場を提供し、ここから相互理解を深め、強い絆で結ばれる関係を育成することを目的としています。

 今回開催した研修会は、平成17年11月25日、全国消費者団体連絡会運営委員でコンシューマーズ京都事務局長の莇(あざみ)祥子先生から「今、問われる生産者の社会的責任」と題してご講演をいただきましたので、その講演要旨を掲載いたします。

 
講演要旨
 

 京都の消費者団体連絡会というのは、他団体の偉い人たちだけが集まってくるような形ではなくて、自分の意見を持った人たちが集まってこられるような組織にしたいと思いNPO法人として出発しました。
BSE問題は日本の食の安全行政そのもの、正念場を迎えていると思います。アメリカから牛肉を輸入するということについてずいぶんと論議をしました。

 今、日本では20カ月以下の牛に対してはBSEの検査をしなくてもいい、ということになりましたが、消費者からもずいぶん声を出しましたので、結果として全頭検査というのを今もやっています。これで日本の牛肉に対しては、消費者は非常に安心感を今持っています。

 そもそも食品安全委員会は、このBSEがきっかけでできました。今は関係各方面でいろいろな意見を聞く機会を持っています。しかし、アメリカからは、非常に強い要求があって、関係筋は結構苦労しているんだろうと思います。

 輸入ストップにより、国産牛肉は高いものとなっている傾向があるが、牛肉輸入の再開で、若い人たちが海外の牛肉を食べる機会にならないように、少し慎重であってほしいと思っています。

 BSEは肉骨粉の給与という人的な原因が引き金となっていますが、鳥インフルエンザの問題というのは、責任の所在がそういったところにはありません。京都は昨年の2月に鳥インフルエンザ発症で、大騒ぎになりました。情報の公開が遅れたためにより状況が悪くなった場面もありましたが、消費者団体は、生産者の立場に立ち、消費を進めました。しかし、一方では、消費者はすぐに風評被害を起こすとかで消費者が悪者にされたこともありました。

 しかし、現実の問題として消費者への情報は、連日テレビで、白い防御服を着て、消毒し、鳥を殺していっている風景でした。

 生産現場とか生産地で何が起こっているのかということを消費者はあまり知らないということがよく分かりました。同時にお互い伝え合うような、そういう機会もあまり持っていなかったということを痛感しました。

 結局的には、京都の生協と生産者らが一緒になって、まだ終焉していない間に「鳥インフルエンザなんかに負けないぞ集会」を開きました。この集会で、生産者は本当に涙流して喜ばれた。「本当にうれしかった」と言われました。

 非常な災難ではあったが、これを機会に、生産者、流通、消費者、行政らが非常に近く歩み寄ることができました。

 卵の日付表示の問題で、もう大騒ぎになったこともありました。

 「コンシューマーズ京都の食育セミナー」の開催を続けてきています。ここでは、生産者の人たちにいろいろな農産物を持ってきてもらい、そこでいろいろなお話をしてもらっています。おいしく食べるにはどうすればいいのかといったことは、生産者の皆さんが一番よく知ってみえます。

 今後も生産者と消費者がいかに密接に顔の見える関係をつくるかということが非常に大事だと思います。トレーサビリティのシステムで科学的に検証していくということも必要だが機械やシステムに頼っただけでは駄目な面もあると思います。

 ある時「安心・安全の食料を安価に安定的に消費者に届けることが生産者の社会的責任ですよ」と言ったところ、ある学者の先生から「安心・安全なものを今消費者が求めているのだから、決して安価とか安定的とかいうことは言ってはだめだ。」という意見をいただきました。しかし、やはり生産者であるからには、食べてもらわなければだめなわけで、高いから食べてもらえなければ駄目です。これはある一定のフェアな金額というのが必要だし、いざ食べようと思っても、どこへ行って買っていいのか分からないということでは困ります。それでは生産者が責任を果たしているということにはならないだろうと思います。

 安心・安全は基本です。その上で、やっぱり安価で安定的に消費者に届けられることが、生産者の社会的な責任であり、それを生産者が自覚したときに、いろいろな工夫や、交流、物の見方などが出てくるんではないかなと思います。

 消費者としては、それをありがたく、おいしくいただくことで支援をしていきたいと考えています。

 
講演の詳しい内容はこちら
 
研修会の様子
 
あざみ先生
 
会場の様子 会場の様子