~親から受け継ぎ、子に引き継いだ養豚経営~
有限会社松葉ピッグファーム
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![]() 自然環境を活かし、観光産業や農産物直売所、特産品づくり等を通して地産地消や都市との交流も盛んな地域である。 |
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![]() 平成8年ころから月1~2頭のペースで直販を開始し、平成14年からは農産物直売所へ出店して本格的に直販をスタートさせた。 後継者は長男、次男、三男が就農し、次男と三男は生産部門に従事、長男が販売部門を担当している。 |
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表:経営実績(平成25年) |
経営の 概況 |
労働力員数 (畜産・2千hr換算) |
構成員 | 6.2人 | |
従業員 | 6.2人 | |||
種雌豚平均飼養頭数 | 262.0頭 | |||
肥育豚平均飼養頭数 | 2,998頭 | |||
年間子豚出荷頭数 | 0頭 | |||
年間肉豚出荷頭数 | 6,290頭 | |||
収益性 | 所得率(構成員) | 13.9% | ||
種雌豚1頭当たり売上原価 | 769,283円 | |||
生産性 | 繁殖 | 種雌豚1頭当たり年間平均分娩回数 | 2.46回 | |
種雌豚1頭当たり分娩子豚頭数 | 27.6頭 | |||
種雌豚1頭当たり子豚離乳頭数 | 26.3頭 | |||
肥育 | 種雌豚1頭当たり年間肉豚出荷頭数 | 24.0頭 | ||
肥育豚事故率 *離乳時からの事故率 | 4.0%* | |||
肥育開始時 | 日齢 | 22.0日 | ||
体重 | 7.3㎏ | |||
肉豚出荷時 | 日齢 | 172.9日 | ||
体重 | 116.3㎏ | |||
平均肥育日数 | 150.9日 | |||
出荷肉豚1頭1日当たり増体重 | 0.722㎏ | |||
トータル飼料要求率 | 2.88 | |||
肥育豚飼料要求率 | 2.45 | |||
枝肉重量 | 78.2㎏ | |||
販売価格 | 肉豚1頭当たり 平均価格 |
34,361円 | ||
枝肉1kg当たり 平均価格 |
440.6円 | |||
枝肉規格「上」以上適合率 | 49.2% |
【無理のない投資】 父親の時代から規模拡大のために豚舎の建設や環境保全のための施設に投資を行ってきた。近年では6次産業化のための設備投資を行っている。外部からの資金の借り入れについては、平成22年度の日本政策金融公庫からのセーフティネット資金があるのみで、種雌豚260頭規模の借入額としては僅少であり健全な財務状況を保っている。 【防疫体制と優秀な生産性】 種雌豚1頭当たり平均分娩回数は2.46回で、繁殖の技術水準が高い。この経営では、同じブランド肉を生産する仲間と種雌豚、飼料を統一し、それぞれが高い生産性を維持している。この生産性の高さは家畜の素質に起因する部分もあるが、オールイン・オールアウト式の飼育により疾病による損失が少なく、成績の低下も招いていない。空舎期間は1週間以上取るようにローテーションを組み、この間に消毒を徹底している。 また、豚舎の出入り口には消毒槽や長靴を準備したり、作業に必要な人間の移動も順路を一定にするなどの決まりを定めたりしている。空舎期間を設けることから施設(豚房等)が余分に必要となるが、これを埋めるだけの成果は十分にある。 管理獣医師の定期的な検査処方によるワクチン接種を的確に行っている。また、豚舎のカーテン等の開口部には防鳥ネットや柵の設置、防鼠業者による定期的な点検・処理等により病原体や寄生虫等の侵入防止対策を施している。肉豚の出荷成績についても極めて生産性が高い。平均枝肉重量78.2kg、平均出荷日齢172.9日といった成果に表れている。 【仲間とのブランドの生産販売】 同ファームの種雌豚規模は260頭であり、 県平均の180頭を上回る。しかし、1戸の生産活動のみでは、スケールメリットにも限界を感じ、四日市食肉センターに豚を出荷する養豚家有志の11戸により「四P会」を結成し ている。11戸で概ね2,600頭という種雌豚規模となることを活かし、種豚、飼料、ワクチン等を共同購入し、コスト削減に努めている。 さらに、この生産者グループを中心とした8戸の生産者により種豚、飼料を統一し「さくらポーク」のブランド名で地元スーパーとの取引を行っている。 この四P会では、コンサルタント、メーカー、研究者等を招き勉強会を開いている。また、統一したパソコンソフト(ピッグチャンプ)を利用することにより、成績を比較し合い、管理獣医師からのアドバイスを受け、生産性の向上に努めている。 販売先は、地元で精肉販売やレストランを経営する「サンショク」や精肉販売・焼肉レストランを経営する「トミスミート」が主力となっている。年間約6,300頭出荷する肉豚の約半数をここに提供している。 概ねの年間販売実績は、次の通り。
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【独自のブランド販売】 直販を開始した当初は、月1頭程度を消費者グループに配達・宅配していたが、地元のファーマーズ系の直売店での販売を手掛けてから順調に販売頭数を増加させてきた。現在では年間販売頭数は1,000頭規模となっている。 当初は枝肉の整形、カット等は業者に委託していたが、平成18年、長男が就農し、加工・販売部門を担当することになった。しかし、精肉についての知識がなかったので、肉豚出荷先の紹介により3年間の修行(研修)に入った。平成19年11月に自社にミートセンターを建設したことにより、と畜以降の全工程を自社で行えるようになった。当初はコストアップにつながることを懸念して精肉販売に限定していたが、労力的にも無理がないこと、直売店での顧客からの要望等もあり、現在ではハンバーグ等の製造販売にも取り組んでいる。 直販において留意していることは、1頭全部を売り切るという販売方法である。基本的には「ロース、バラ、モモ、カタ」の各1kgの4kgセットを基本に、2kg、3kgのセット販売としている。直販部門では、セット販売とファーマーズでの販売が主力であったが、市内に点在するゴルフ場でのコンペ賞品としての需要や同レストランでの素材としての利用量が急増した。 【労働分担】 息子たち3人は、卒業後にそれぞれ他産業に就職したが、次男が生産現場に就農したことを皮切りに長男が加工・販売部門に、その後、三男が生産現場で就農することになった。次男は米国研修を経て、また、長男は精肉技術を学びそれぞれのスキルを高めている。後継者として3人の息子たちが就農したことにより、担当部門を分離し、それぞれの責任体制を確たるものにした。妻や次男の嫁は直販や経理部門を担当し、経験を積んできている。 これらの就農状況を見極め、規模拡大を念頭に豚舎の増築や加工部門の施設の建設を進め、現在、ひとつの節目にたどり着いた。 |
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![]() いなべ市には、養豚農家が1戸のみである。地産地消や食育が推進される情勢にあって、小学校児童や幼稚園児、あるいはその母親等に対し、生産者の代表として「お話」の場での講師の役割を果たしている。 過去には、養豚場内を見学してもらうこともあったが、家畜防疫の観点から最近では実施できないことが残念ではあるものの、その分をお話の中で「命をいただく」ことをしっかりと理解してもらえるよう地域の要望に応えている。 【地元での自社ブランド販売】 ![]() また、鮮度の良い豚肉を提供したり、一般的には手に入りにくい商品(スペアリブ等)の販売で他店との差別化を図りながら、直販の魅力を消費者に届けている。 【農業組織や地域おこしへの参加】 人との交流が新しい情報をもたらしたり、新たな人脈になると感じ、養豚仲間のみならず、地域、業界を越えた交流を図るように努めている。養豚生産者が減少しつつも、県北部には年齢的も近い養豚仲間がおり、仕事のみでなくゴルフ等の場面でも交流がある。これらのつながりは次の世代(後継者)や妻の間にも同様のつながりを生んでいる。 妻の活動は農村女性アドバイザーや指導農業士の活動に止まらず、畜種を越えた畜産女性が集う県(サン・カラット)や全国の組織(全国畜産縦断いきいきネットワーク)への参加にも積極的である。 後継者は、現在、地域の農業者を主としたグループ活動の中で地域の特産物を使ったいわゆる地域おこしの活動に積極的である。 このように、日常の生産活動のみでなく、人との交流の場に参加することにより経営や生活に幅を持たせていこうという想いがある。 |
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【直販部門の拡大と経営の安定化】 自社ブランドの「さくらポーク松葉」をひとりでも多くの方に食べていただくためには、安心できる飼料、おいしい血統を基本に、「豊かな自然」という環境に加え、防疫体制で維持する優れた豚舎環境を維持していくことだとしている。直販部門では、月100頭(販売比率として概ね20%)の肉豚販売頭数をひとつの目標としている。 試算として、一般的な市場出荷の場合、相場では、3万5,000円/頭(手取額3万円)であるが、ブランドとしての販売であれば、枝肉単価で60円/kg程度の単価アップが可能となり、40,000円/頭で販売することとなり、国際化の波にも太刀打ちできる経営となり安定化を図りたいと考えている。 直販部門では、生産者サイドのみの視点ではなく消費者が何を求めているのかを判断し、商品の形状や価格等も検討しつつ、販売方法も現状がよいのか、宅配、ネット販売等を強化すべきかを見極めていきたいとしている。 現在は、本社(自宅)に併設しているミートセンター(加工・販売所)が加工・販売の拠点となっているが、取扱量が増加していることから、運搬や販売の利便性を高めるために、今年11月には、当所から約10km離れた場所(市の中心部)に自社の販売店を併設したミートセンターを移(新築)し、新規に開店させることになった。さらに、将来構想として、レストランの運営も視野に入れていることから、移転先にはその敷地も確保している。 |