牧場のアイスクリームショップ「ミルクパレット」
ミルクパレット
三重県下初の牧場直営店がH13年5月OPEN
中村浩久さん(三重県津市一色町)

中村牧場の紹介

 中村さんの牧場は、津市の「メッセウィングみえ」の近くにあります。今から約50年前に祖父の武三郎さんが、1頭の乳牛を導入したのが酪農への第一歩でした。

 現在、経産牛48頭規模で、年間約350トンの生乳を生産しています。家族は、父親の孝さん(64歳)、母親のユキ子さん(61歳)、浩久さん(38歳)、奥さんの美樹さん(36歳)、と長男圭佑くん(7歳)、次男庄吾くん(4歳)です。酪農作業は、浩久さんと父親の孝さんが主に行い、母親のユキ子さんが、搾乳、哺乳を手伝っています。浩久さんは、酪農学園大学卒業後、牧場実習を経て昭和59年に就農しました。

 
手づくりアイスクリームってこんなにおいしいの?!
手作りアイス
  
 アイスクリームショップ「ミルクパレット」は、二人の息子さんに手づくりのアイスクリームを食べさせたいという美樹さんのやさしい気持ちから生まれたお店です。

 美樹さんは、うちの牛から搾った牛乳で、子供たちに安心して食べさせられるアイスクリームを作ってあげたいと考えたのです。小型のアイスクリーマーを購入し本を片手にアイスクリームを作り始めました。

 できあがったアイスクリームのおいしさに一番驚いたのは美樹さん自身だったかもしれません。「うちの牛乳でこんなにおいしいアイスクリームができるなんて…」でもまだその時は、美樹さんは会社勤めの身で、まさか自分達がアイスクリームショップを開くことになるとは思ってもいなかったそうです。
 

牧場周辺にも変化が起きていました

 その頃、中村牧場の近くに大きなバイパス道路が建設されることになりました。大きく変わる畜舎環境にどう対応していけばよいのか、このまま今までのように酪農を続けられるのかという不安にも似た気持ちがフツフツと湧いてきました。将来について家族で話し合う機会も多くなりました。

 美樹さんは、いつの間にか我が家の新しい酪農経営と手づくりアイスに取り組んでみたいという夢を重ね合わせていました。

 

偶然も味方をしてくれました

 2年前の夏、家族で北海道旅行をしました。虻田町のある牧場直営のアイスクリームショップでおいしい手づくりアイスの味に感動し、ますます夢は膨らむばかり。そしてその後津市内で開催された北海道物産展で、偶然にもそのアイスクリームショップの奥さんと再会したのでした。自分の夢を実現したいという熱意が伝わったのでしょう、ショップの開店に向けていろいろと相談にも乗ってもらったり、教えてももらいました。

 なにせ三重県下では初の取り組みです。近在では参考にできる事例もないことから、近県のアイスクリームショップを訪ね歩きました。施設面への助言や衛生面での注意点、開店に先立っての準備や開店後の苦労話はとても参考になりました。

 

そしていよいよOPEN!
店内の様子

 
 自分たちが育てた牛から搾った牛乳で、自分の手で作ったアイスクリームを、目の前でお客さんが食べる、そして「おいしい。」と言っていただくことは、とても新鮮でうれしいことです。県下初の牧場直営アイスクリームショップということで、マスコミにも取り上げられ、お店は好調な滑り出しでした。うれしい悲鳴と表現すべきでしょうか。

こんなメニューがあるよ にぎやかなお店では、子供たちがおいしそうにアイスを食べ、お客さんとの会話もはずみます。お客さんとの会話の中から新しい発見もありました。アレルギー体質のお子さんを持つお母さんと「食」についてお話することもあります。 まだ、オープンから日は浅く、毎日毎日が勉強です。

 牛の飼育にもこれまで以上に力が入ってきました。おいしいアイスはおいしい牛乳から、おいしい牛乳は健康な牛から、健康な牛はよい環境からといった具合です。

 お客さんには、ショップだけでなく隣接する牛舎にも足を運んでもらい、舎内の様子を見てもらえるようにしています。アイスを通じて地域の皆さんとふれあう機会が驚くほど増えました。自分達の思いをもっと皆さんにも知ってもらいたいという気持ちを込めて、手書きのチラシを作ったりもしています。

 お客さんにもっと酪農のことを知ってもらいたい、低迷する日本の酪農を理解をしてもらいたいという願いは日を増すごとに強くなってきました。
 

中村さんご夫婦さて、将来は・・・

  アイスクリームショップの母体は、酪農経営です。酪農経営を継続していく上で、まず取り組んでいかなければならない問題は、環境保全についてでしょう。現在は農協が有機米の生産に取り組んでいるので、堆肥の利用も順調ですが、今後のこととなると確約されたものでもありません。自分のできる範囲の努力は惜しみませんが、行政や酪農・農業仲間と協同歩調を取っていくことが大切だと考えています。

 中村牧場では、15年も前から小学生たちが写生に訪れたり、夏休みの自由研究の場として訪問を受けたりもしています。子供たちが牛に触れ合うことで、情緒豊かなやさしい気持ちを育ててくれることと思います。  手づくりアイスクリームに取り組んだことで、新しい「輪と和」が広がりました。その「わ」は、改めて酪農について考え、食についてお客さんと話をし、そしてなんといっても中村牧場に大きな大きな夢を運んでくれました。

 
ミルクパレットMAP