将来を見つめる経営でありたい

「畜産いいとも」の5人目は、
鈴鹿市上田町の近藤博信さん(昭和28年生まれ)です。
 

近藤さん養鶏を始められたきっかけは?

 私は神戸出身で、学生時代は工学系の勉強をし、鈴鹿市の大手自動車会社へ就職しました。縁あって妻と知り合い結婚しました。この義父が養鶏をやっており、これを継いだというのが私の養鶏業の始まりです。

まったく畑違いの仕事ですね。

 鶏を飼う技術そのものは、自ら学んでいくしかありません。試行錯誤もありましたが基本を忠実に、現場を見て経験をつんで、これを活かすといったことの繰り返しです。鶏という生き物を飼う技術は不変のものかと思っていましたが、20年以上経った今、振り返ってみるとやはりその時代に即した、そして何よりも将来を見越した飼育方法、経営方針と言うものの重要性を痛感します。
 鶏を飼うこと、卵を売ることについては、就農当時から問題はなかったんですが、鶏糞の処理には苦労しました。良い堆肥を作ってはいたんですが、なにせ旧知の友といった仲間がいない環境な訳ですから、他の養鶏家のように「堆肥使ってくれや」の一言で引き受けてくれる友人はいませんでした。今ではその心配はなくなって、むしろ環境面では人より率先して新しい取り組みをはじめています。

新しい取り組みとは?

 自分の経営そのものは、まずまず波に乗って生活していくだけの所得を上げています。そこで考えなければばらないのは、将来自分があるいはこの経営がどういう風に社会に貢献できるかということだと思います。
 環境問題、リサイクルといったことについて、社会全体が大きな関心を持ってきています。私は、地域に根ざした仲間を作り、私の経営から出る鶏糞、学校給食やスーパーからでる調理の残渣や生ゴミを、発酵処理して堆肥を作ることを始めました。行政が生ゴミを処理すれば経費がかかるところを、民間レベルとして処理やリサイクルに取り組んでいこうというものです。
 さらにこの堆肥を使った農作物をスーパーが買い取ってくれたり、給食に使ってもらえれば、「リサイクル」が完成する訳ですが、まだ取り組み始めて8ヶ月ということで、このあたりは将来の課題ということです。
 こういったことで貢献できることを社会が認めてくれるようになると、畜産を始めとして、農業に就農しようする若者の励みにもなるでしょうし、誇りにもつながっていくかと考えています。

畜産会の経営効率化機械リース事業をうまく使っていただいているようですが。

 鶏卵の販売に当たっては、品質はもちろんですが、「安全性」を求められる時代になってきています。鶏舎を5年計画で順次ウィンドレス鶏舎に改築していく計画を立て、実行してきましたが、結果として3年間で目的を達成できました。
 同じ敷地内に旧型の鶏舎と新型の鶏舎が混在すると、作業効率に大変な差が生じます。また、食品製造工場並みの衛生対策を考えると、どうしても早い時期に施設の改善をやってしまいたかったというところです。
 鶏舎や作業場が整備されて名実共に衛生的になると、雇用面でも効果が上がり、若いパートさんも働いてもらえるようになりました。 資金繰り計画のひとつとして、効率化機械リース助成事業を利用したということです。この助成事業を利用したことを知って、後に続いた養鶏家も何軒かありました。

 最後に、「この立派な経営を息子さんにも引き継いでもらいたいでしょう。」とお尋ねしたところ、「引き継いで欲しいというようなことは要求しませんが、私の経営内容や社会に対しての考え方を理解してくれれば、それなりの結論を出してくれるようになるでしょう。」という心強い言葉を聞かせてもらいました。