松阪牛と普通の牛では、食べているエサの内容が大きく異なります。
普通の牛…粗飼料(いわゆる草):濃厚飼料(いわゆるご飯)=6:4~4:6
(ちなみに、牛は草食動物ですので草のみでも問題ありません)
松阪牛…粗飼料(いわゆる草):濃厚飼料(いわゆるご飯)=3:7~2:8
肥育期間
約20ヶ月
 前半(~11ヶ月)…3:7
 後半(12~20ヶ月)…2:8  
  
 松阪牛が食べているエサの粗飼料と濃厚飼料の割合は、ルーメン(4つ胃がある牛の第一胃のこと)内のpHが下がる事によっておこる消化障害の『ルーメンアシドーシス』を起こしてもおかしくない割合です。人間で例えると胃酸過多の状態に近いですが、そうならないのは肥育農家の優れた技術によるものなのです。 
 ではなぜそのような飼い方をするのでしょうか?
松阪牛が食べている粗飼料と濃厚飼料について詳しくみていきましょう。
   肥育期間の粗飼料は、特に肥育の後半は稲わらのみを給与します。
 一般的な粗飼料ではビタミンAがたくさん含まれており、ビタミンAが多いと肉色が濃くなったり、肉の脂肪の入り方が雑になりやすいといわれています。
 ビタミンAを制御することにより、よりきめ細やかな脂肪が肉中に入り、柔らかでうまみのある良質の肉に仕上がるとされています。
 稲わらにはビタミンAがほとんど含まれておらず、この期間の最適飼料となっています。粗飼料の割合が少ない状況でも体調が維持されるのは、稲わらであるからこそ可能となる特質を持っているのかもわかりません。
  
  
  
 
 
  
  
  
  
 
 
粗飼料 ・・・稲わらのみ。     
   ビタミンAを制御肉質が良くなる  
サシ(脂肪交雑)の
入った霜降り肉
  青草はNG!  
   青草にはビタミンAが多い 肉の色が綺麗な赤でなくなる
荒い脂肪(荒ザシ)
   
 濃厚飼料は、前半タンパクの多い飼料を給与しますが、後半は肉中に脂肪をつけるため、炭水化物を多めの飼料に転換していきますが、炭水化物が多くなるとルーメンアシドーシスを引き起こしやすくなりますので、この時期は特に日々の観察が重要となってきます。
  
 濃厚飼料 前半:タンパク質が多め肉量をつける 
 
後半:炭水化物が多め脂肪をつける

 後半の状態で特産松阪牛は更に10ヶ月肥育します。ですので、ビタミンAを制御している状況が長引くことになります。
 
 ビタミンAを制御する事で、特に後半の時期、発育停滞・食欲不振・失明の危険性が増しますが、肥育農家が持つ卓越した松阪牛の肥育技術で防いでいます。
 
  ・ビールを飲ませ、食欲増進
  ・体をブラッシングして、刺激
  ・細かな飼養管理・・・個別飼育(1頭飼い)   等々
特産松阪牛
 …松阪牛の中でも、兵庫県産の子牛を松阪牛生産区域で900日以上肥育した牛
  
 それではなぜ、ビタミンAの制御がより脂肪が入った肉質となるのでしょうか?
 ビタミンAは、脂肪前駆物質から脂肪細胞への分化を阻害することが分かっています。肉中に脂肪をつけるため、脂肪細胞が分化する13~20ヶ月の期間にビタミンAを制御する飼養方法が一般的となっています。(下図)
 松阪牛の肥育技術は、まさにこの理論に裏付けられた技術といえますが、このことにより、松阪肉の特徴であるサシが細かく入った「霜降り肉」が実現できているものと思われます。 
  
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